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《森の植物の歳時記》 [169] 【ナガミヒナゲシ(長実雛罌粟)】

春早い時期から、道端にオレンジ色の花を咲かせるケシがあります。細長い果実を着けることから、ナガミヒナゲシと呼ばれます。
原産地は地中海沿岸で、日本には1961(昭和36)年に帰化していることが確認されています。花が風に揺れる風情は可憐で、人気を集めることもあるのですが、旺盛な繁殖力で、近年、問題になっています。
 
秋に発芽して、越年草として地面に張り付くように葉を広げて冬を越し、寒さの残る早春には花を咲かせる株が多いのですが、年を越さず、年内に花を咲かせる株もあります。
 
多くは大株になるのですが、数センチしかない小さな株でも花を咲かせ、結実します。
薄茶色に熟す果実は雌しべの先端が円盤状になっており、その下に隙間ができます。この隙間から果実の中に入った風が径0.6㎜の種子を巻き上げるようにして種子をまき散らします。1個の果実に1600個の種子が含まれるという報告もあります。
切り口から出る汁が肌に着くと炎症を起こすという報告もありますので、皮膚の敏感な方や子供さんは注意してください。
 
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)