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《森の植物の歳時記》 [75] 【ウマノスズクサ(馬の鈴草)】

ウマノスズクサは花の姿をパイプ状とか、ラッパ状と表現される蔓植物です。
林や畑の縁、民家の庭などに普通に生えているのですが、刈り払いされることが多く、花を見ることは難しいのが現実です。
名前の由来は、その果実が馬の首にぶら下げる鈴に似ていることからとされていますが、花を見ることが難しいのですから、果実を見られることは稀で、残念なことです。
花は不思議な形をしています。つぼみの下の方の膨らんでいる部分に雄しべ、雌しべが隠されています。ハエの仲間やアリなどの虫は花を包んでいる筒(苞)に誘われるように侵入します。苞に生えている下向きの毛は侵入した虫の脱出を阻みます。雌性先熟で、雌しべに続いて雄しべが熟したころ、毛は抜け落ちて、虫は脱出しやすくなります。
ウマノスズクサはジャコウアゲハの幼虫の食草としても知られています。幼虫は葉を食べつくしますので、花が見られない、果実ができない原因の一つかもしれません。
ウマノスズクサは果実ができなくても、根をあちこちに伸ばしてしぶとく生き延びているようです。

廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)