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《森の植物の歳時記》 [76]  【ノリウツギ(糊空木)】

樹皮を水に浸して得られる粘液が紙漉きの際の糊料として使われることと、茎が中空であることから、糊空木です。白い装飾花と両性花が円錐形に咲きます。花が咲き始めると、大小の甲虫類が群がります。
冷温帯といわれるやや冷涼な地域に自生しますが、造園木として植えられているのを見かけることもあります。ミナヅキなどの園芸種も植えられるようになっています。
近年、自生地ではシカの食害にさらされることが多く、生育数は減少しています。紙漉きのために、自生のノリウツギが山村地域の収入源となっていた時代もあったようですが、シカの食害に加えて、後継者不足も加速しており、現在ではどこも厳しい状況にあるようです。
紙漉きも後継者不足など抱える問題が多く、伝統文化継承の難しさの一端が見て取れるようです。現在でも、福井県の越前和紙、奈良県の吉野和紙など限られたところでノリウツギを糊料として使った紙漉きが行われていますが、多くのところでは、糊料としてトロロアオイの根から採れる粘液が使われているようです。

廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)

























トロロアオイ