ヒトは、自然を克服して人工物の中で生活できる環境を整え、食料生産効率を高め、地球でもっとも繁栄した種になりました。2016年に74億人、2030年中には85億人を突破し、一年間に0.7億人のスピードで増加しています。地球という自然資本には限界があると警鐘を鳴らしたのは1972年に発表された「ローマクラブの成長の限界」です。更に、1992年の「リオ地球サミット」では持続可能な開発のための教育が提唱されました。
文部科学省の教育行政もグローバル化やIT化への対応として丸暗記型の知識偏重から、「生きる力」を育むことを第一義に据え、考える力の習得により、PISA(※)基準での学力を求めるように変化しています。
(※)Programme for International Student Assessmentの略。経済協力開発機構(OECD)による国際学習到達度調査で、15歳の生徒を対象に、読解力、数学知識、科学知識、問題解決を調査する。
子ども達の「生きる力」を育むのは、確かな基礎学力の上に、自ら課題を発見し、多面的に物事を捉え、自らの考えをブラッシュアップする機会を体験的に積み重ねていくことです。長期記憶に繋がるのは、体験に根ざしたエピソード記憶であることは、科学的にも裏付けられています。
自らの存在が自然と深く繋がっているという確かな感覚の上に立って、自然と向き合い、仲間と一緒に「問い」と「答え」を探し求めていく自然体験が子ども達の「生きる力」を育むものとして、重要性を増しています。
ところが子ども達を取り巻く環境を見ると、三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)の普及は50年前、コンビニ普及は20年前、そして現在はスマホなしでは歩くことも出来ない生活へと、急激に変わっています。子ども達の周りから自然と触れ合い、遊び、そこから学ぶ機会は失われています。半世紀前の子ども達にとって当たり前の生活の一部であった自然は、わざわざ教育の場面で取り上げる存在に変わっています。
自然を感じる入口に立つ、生き物の存在を知る、その不思議さに触れる、そういった自然体験を通じて自分と自然との「繋がり」に気付くことが原点です。自分が生きていることの素晴らしさに気付くことで、自己の有用感を高めることができます。そうすれば、家族、友達、暮らしている地域、そして世界、地球との繋がりを、自分が生きていることそのものから繋がっているものとして学んでいくことができます。
子ども達の生きる力を育む為には、教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加(アクティブラーニング)が必然となり、教える側の意識の変革が大きく求められます。
こういった状況の中で、優良事例に学ぶ機会として学校の森フォーラムは全国の教員の皆様に役立つ存在を目指しております。