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《森の植物の歳時記》 [244]【イズセンリョウ(伊豆千両)】

伊豆半島の伊豆神社の境内で多く見られ、センリョウに似ていることからの名です。
両者は分類的には関りはなく、センリョウが赤い実をつけるのに対して、イズセンリョウは白い実をつけます。
谷筋など、照葉樹林の林縁で、やや湿り気の多いような場所を好んで生育しています。
若木は立ち上がりますが、成長するにつれて、茎の上部は垂れ下がるようになります。
雌雄異株です。秋に小さな蕾をつけますが、白色の花が開くのは5月頃になります。結実した果実は秋から冬にかけて、乳白色に熟します。
シカの忌避植物として知られています。シカが多く生息する地域で、他の植物が食べられても、イズセンリョウは残されていると報告されています。
多くのシカが生息している奈良公園では、シカが食べないためにイズセンリョウが多く生育しています。こうした現象は、奈良公園に限らず、宮城県の金華山、広島県の宮島、千葉県の房総丘陵など、多くの場所でも確認されています。シカの嫌う成分を含んでいるものと推察されています。
近年、奈良公園ではイズセンリョウを食べるシカが出現しているという報告があり、興味深いところです。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)

イズセンリョウ