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《森の植物の歳時記》[237]【ツルアリドオシ(蔓蟻通し)】

薄暗くて水がしみ出しているような斜面を被うように生えるつる性の多年草です。
葉も花も果実も小さいので、気づいて下さる方は少ないかもしれません。
お正月に『千両、万両、有り通し』と言っておめでたい植物が飾られますが、その一つのアリドオシ(蟻通し)に似ていて、蔓性であることからの名前と言われますが、アリドオシにある蟻を突き刺すような刺は、ツルアリドオシにはありません。
般には、おめでたい席に飾られることもないようです。
夏に咲く白い花は、湿っぽい場所だからなのか、注目されることは少ないようです。
冬に熟す赤い果実は、赤い色が目立つのでしょうか、多くの方が「噴火口が二つある!」と注目して下さるようです。
花は必ず二つが一緒に咲きます。二つの花の子房の部分が合体していますので、結実した時には、二つの果実が合体して、つなぎ目のない一個の果実のように見えます。
二つの噴火口に見えるのは、二つの花の萼の痕が残っている姿です。
水がしみ出しているような薄暗い斜面がありましたら、探してみて下さい。噴火口の二つある赤い実が見つかるかもしれません。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)

ツルアリドオシ





アリドオシ