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《森の植物の歳時記》[130]【ナンキンハゼ(南京櫨)】

街路樹として植えられているのを多く見かける木です。この季節、紅葉の美しさは注目を集めます。また、裂開した果実は蝋物質に覆われており、白い実が青空に映えます。
江戸時代の本草学の集大成として評価の高『本草綱目啓蒙』に「秋ニ至リ落葉ノトキ紅葉ニシテ美シ、故にナンキンハゼト云」とあります。秋の紅葉の美しさを、同じ採蝋植物で紅葉の美しいハゼノキに喩えたもののようです。
江戸時代に中国から渡来したとされていますが、はっきりした年代は分かっていません。
初夏に穂状に咲く花は、花穂の下の方に雌花、先端の方に雄花が咲き分けます。雄花だけの花穂もあります。
熟した果実は蠟物質に覆われた種子が鳥の好物です。
蝋の融点が低く、現在では採蝋植物としての栽培はありません。
鳥が種子を運びますので、街路樹や公園樹として植栽された場所からはるか離れた場所で生育しているのを多く見かけます。シカが食べないこともあり、奈良公園などで繁殖して自然植生を侵害しているとの報告もあります。
いろいろ問題を抱えてはいますが、この季節、一先ず、美しさを愛でてみましょうか。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)


ナンキンハゼの実