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《森の植物の歳時記》 [230]【ヤツデ(八手 八つ手)】

窓の外に白きやつでの花咲きてこころさびしき冬はきにけり 島木赤彦
ヤツデの花が目を引く季節です。
ヤツデの名前は、葉が主に八つに深く切れ込んで、手のように見えるからと思われていますが、実際には、九裂、七裂、五裂など、奇数に分かれているのが大部分です。また、発芽後出る最初の本葉は分かれていません。
牧野富太郎は『ヤツデは八ツ手で、ただ何となくその分裂葉を眺めてつけた名であって、手形に多く切れ込むので数多いことを「八」で表現したもの』と記しています。
ヤツデの葉柄は株の下に行くほど長くなります。葉の大きさも下の方が大きくなります。また、茎につく葉の角度も140度前後と規則性があります。十分な日照が期待できない環境で生きていくうえで、全ての葉で効率よく光を受けられるようになっていった姿と言われています。
晩秋にたくさんの白い花が群がるように咲きます。
花盤と呼ばれる台になっている部分から蜜が染み出します。花の少ない季節、この花蜜を求めてアブやハエの仲間が集まります。
結実した果実は、翌年の五月ころに黒く熟します。ヒヨドリなどの野鳥が好んで食べて、種子散布に貢献します。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)

ヤツデ