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《森の植物の歳時記》 [183] 【モミジイチゴ(紅葉苺)】

モミジイチゴは野山を散策していて、見つけると嬉しい果実の一つです。ほんのり甘い山の恵みは、人間だけではなく、多くの生き物を引きつけます。
イチゴと聞いてイメージする真っ赤なものではないのですが、緑の葉に包まれるように色づく淡いオレンジ色も魅力的です。
春に咲く白い花は、思いの外大振りな花です。下を向いてぶら下がるように咲きます。雄しべが筒状に集まり、その底の部分に蜜を溜めて虫を誘います。ミツバチやマルハナバチが下向きに咲く花の雄しべにぶら下がって、夢中で蜜を吸っている光景は、思わず見入ってしまいます。
普段、イチゴとして食べているのはオランダイチゴと言います。食べている部分は、花托(かたく 花の中の雌しべ、雄しべを支えている部分)が肥大したものです。肥大した花托に、痩果(そうか)と言われる果肉のない果実(種子のように見えます)がついています。
これに対して、モミジイチゴは液果と言われるつぶ一つ一つが果実で、中に種子があります。
たかがイチゴですが、各々、食べている部分が違うというのも興味深い自然の姿です。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)









オランダイチゴ