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《森の植物の歳時記》 [181] 【オニノヤガラ(鬼の矢柄)】

新緑の落葉樹林の中に、突然出現する高さ1m近くもあり薄茶色の棒? 一瞬、ドキッとするような光景です。
オニノヤガラ、この棒状の姿を、鬼が使う弓矢の矢に見立てた名前と言われています。
ランの仲間ですが、葉緑素を持たない植物なので、自ら光合成をして栄養を作ることはできません。菌類のナラタケと共生して、生きています。菌従属栄養植物と呼ばれることもあります。共生菌(ナラタケ)との関係を築けないと生きていけないため、環境の変化に弱く、保護植物とされている地域もあります。
結実して、種子もできるのですが、0.2×0.8㎜と微細で、共生菌との出会いがなければ発芽することは叶いません。
地下に太いイモのような塊根(かいこん)があります。でん粉の多い塊根は、地域によっては食べられることもあるようですが、稀にしか目にする機会がありませんので、ちょっと畏れ多いでしょうか。
近年、イノシシが食べるという報告もあります。
塊根は生薬ではテンマ(天麻)と呼ばれます。塊根を蒸して乾燥させたもので、めまいや手足の麻痺などに有効とされています。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)