ニュース
《学びの森の生態図鑑No.23》
■白い花の咲く頃■
ウワミズザクラの淡い白が森を彩ったかと思うと、次々に木々の間に白い花たちがあふれます。遠目に眺めながら「あれば、なんだろう?」と思いつつ、記憶の中の白い花を発掘する今日この頃・・・白い花たちは新緑の中に映える色合いで、さまざまな生き物たちを誘って、受粉させてもらおうとしたたかに戦略をねっているのです。

●ウワミズザクラ:サクラの仲間ですが、花は全く違います。小さな白花が集まって、水筒を洗うブラシのよう!ツボミや果実を塩漬けにしたものは杏仁のような香りがするので「杏仁子(アンニンゴ)」と呼ぶそうです。この果実は動物たちも大好きで、鳥やクマの大好物です。
果実酒は不老不死の薬酒と言われ、三蔵法師もこれを求めて旅立ったとか?
●イヌザクラウワ:ミズザクラによく似ていますが、ちょっと違います。興味のある人は見分け方を調べてみてね!

どの花も小さな白い花がたくさん集まって咲きます。秋に熟した実も、鳥や動物たちが大好きで、熟してくると、あっと言う間になくなります。どちらも、花や実はとても似ていて、葉の形やつき方で区別します。花の時期もちょっとずれています。
●ガマズミとミヤマガマズミ:良い香りがしそうな花ですが、人間にはあまり良い匂いには感じられません。虫にとってはとても魅力的な香りの様で、たくさん集まります。
●ミズキとクマノミズキ:春先に枝を折ると水がしたたり落ちることから「水木」

こちらも小さな白い花の塊でみんなあふれるように咲きます!
●アオダモ:枝を水につけると水がきれいな青になります。
●アワブキ:文字通り、泡吹き。枝を切って燃やすと切り口から盛んに泡をだすそうですが、花も泡のように咲きます。
●サワフタギ:沢をふさぐようによく茂ります。

小さな米粒のような花に装飾花がついています。
●イワガラミ:岩や木に絡みついて立ち上がります。装飾花は1枚。
●ツルアジサイ:ツル性のアジサイ。装飾花は4枚。
●カンボク:肝木という名は薬用として用いられたから。装飾花は5枚。
●ヤブデマリ:カンボクによく似ています。装飾花は5枚ですが、1枚だけとても小さいのです。

ウツギとは枝のなかが空洞なので「空木」から名付けられています。
●ウツギ:そろそろ知っている人も少なくなった往年の唱歌♬卯の花の匂う垣根に~♪の「卯の花」は「ウツギ」のことです。「匂う垣根」とありますが、実際のウツギはあまり匂いがありません。卯の花が光り輝くように美しいという意味の「匂い」とする説もあるようです。
●ツクバネウツギ:清楚な花に羽根付きのハネのようなおもしろい形の実がなります!
●コゴメウツギ:小さなかわいらしい米粒のような花がまとまって咲きます。
●ノリウツギ:樹皮を水につけるとぬるぬるして糊状になります。和紙をすく時につなぎとして使われました。花は白いブーケのよう。花びらに見えるものは装飾花です。
●ミツバウツギ:ウツギによく似た花で葉は小さなものが3枚ずつ出ます。花の時期は良い香りがします。

ぷらんぷらんとかわいらしくベルのようにぶら下がる花たち。もぞもぞと頭を突っ込むハナアブたちのおしりもかわいいです。咲き終わって、遊歩道にこぼれ落ちている花をみて上を見ると、あら!びっくり!!ということも。
●エゴノキ:若い果実は有毒ですが、ヤマガラが毒を上手に避けて食べるのは有名。
●ネジキ:幹がよじれるように育ちます。こちらも清楚に下向きの花。
●ハクウンボク:白い花の様子が白い雲の様ということからの命名。葉もふわふわした気持ちの良い感触です。

●ヤマボウシ:花びらのように見える総苞片が4枚。それを法師の頭巾に見立てて山法師。一斉に咲く様子はとてもきれいです。花期が長いのも特徴です。紅葉やかわいらしい実も楽しめます。

●ホオノキ:日本自生の木の中で最大級の葉と花を持ちます。ホオは「包」から。大きな葉で食べ物を包みました。花も大きく15㎝ほどあり、インパクト強し!甘い強烈な香りを漂わせます。
1日目に雌しべが成熟し、2日目には一度花を閉じます。3日目に雄しべが開き、昆虫に花粉を運んでもらいます。
いずれの花も森の緑に白く映えとても目を引きます。
上を向いて咲く花、下を向いて咲く花、虫を誘い込むように奥深く蜜を隠している花・・・生き延びるために、それぞれの戦略で進化した自然の造形美です。
(写真・解説の提供:宮城県森林インストラクター協会)
上を向いて咲く花、下を向いて咲く花、虫を誘い込むように奥深く蜜を隠している花・・・生き延びるために、それぞれの戦略で進化した自然の造形美です。
(写真・解説の提供:宮城県森林インストラクター協会)