ニュース
《学びの森の生態図鑑 No.19》
■スプリング・エフェメラル■
宮城県県民の森にも春の息吹があふれてきました。
今回は、県民の森の『スプリング・エフェメラル』、春先にとても賑やかに森を彩る『春の妖精』たちのお話です。
スプリング・エフェメラルとは、春一番に花をつけ、短期間に思いっきり太陽の光を浴びて結実し、夏までには枯れてしまう『春のはかない命』の植物たちの総称。葉が枯れた後は、地中の地下茎や球根の姿で過ごします。
いちめんのカタクリ
春といえば思い浮かぶ一節に『いちめんのなのはな』(山崎暮鳥の『風景 純銀もざいく』)がありますが、県民の森では『いちめんのカタクリ』
市街地からそう遠くないところで、こんな群生に会えるとは!?
カタクリ
1年目のカタクリは、5~10cmに満たないくらいの小さな細い松葉のような葉を芽吹きます。2年目からは、楕円形の葉1枚だけで過ごし、地下茎を伸ばし、少しずつ球根に栄養を蓄えます。そして、7~8年目でようやく2枚の葉を出し、長い茎に可憐なつぼみをつけて、そっと、うつむきがちに花開くのです。
キクザギイチゲ
おひさまに向かってにっこり笑っているような元気いっぱいのお花です。キクに似た花と葉。花の色も白、ピンク、うす紫、紫と色とりどり。
アズマイチゲ
キクザキイチゲとよく似ています。こちらは、うつむき加減に楚々として咲くイメージです。花の色は白一色。葉の切れ込みが少ないのがポイント。
ムラサキケマン
紫色の華鬘(けまん)という仏殿に吊るす仏具に似ているそうです。華鬘・・・調べてみたのですが・・・似ているのかなあ
虫媒花で、ハチの重みで扉が開いておしべとめしべが出会うという、ロマンチックな構造になっているそう・・・興味のある方はお調べください←説明すると、なが~くなります!?
小さなスナップエンドウみたいな実をつけて、果実はホウセンカのようにはじけます。
ヤマエンゴサク
明るい林床を彩るやわらかな紫。お花のあとの種には、カタクリやムラサキケマンと同じように、アリの大好物がついていて、運んでもらいます。
ニリンソウ
「イチリンソウ」「サンリンソウ」もあるそうですが、県民の森の見事な群生はこのニリンソウ。通常は1本の茎から二輪の花を咲かせます。よく観察すると二輪だったり、三輪だったり、いろいろらしい・・・ちょっと時間差をつけて開花します。
はなびらに見えるのは萼片(がくへん)で、大体が5~7枚ですが、12枚をみつけたときはしみじみとみてしまいました。
数えてみてね!
スプリング・エフェメラルは早春に活動する昆虫たちと切っても切れない縁で結ばれています。それぞれの植物の受粉を助けたり、種を運んだりしてくれるのです。勿論、食草とし食べられちゃったりもします。多くの生き物たちの複雑な繋がりがここにもあるのです。
さて、ここまで読んで、あれれ???と思った方もいらっしゃるかもしれません。
ショウジョウバカマ・ヒトリシズカ・セリバオウレン
春に森を彩るこの花たちはどうしちゃったの?
スプリング・エフェメラルと一緒に春爛漫に咲き誇るこの花たちは、夏以降も葉を茂らせて光合成を続けます。
今回、ご紹介したスプリング・エフェメラルは、4~6月には葉が枯れてしまい、その次の春まで、土の中でひっそりと養分を蓄えます。春だけに現れるからこその『妖精:エフェメラル』・・・しかしてそれもまた、はかないばかりではなく、地中でたくましく命をつなぐ、実は相当にしたたかな生存戦略なのです。
さて、お話はおしまい!みなさま、ぜひ、お近くの公園や里山で春の花を探してみてください。百聞は一見に如かず、スプリング・エフェメラルと言わずとも、一輪のスミレの美しさもより心に響くことでしょう。
(写真・解説の提供:宮城県森林インストラクター協会)