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《学びの森の生態図鑑No.15》
■冬芽行進曲■
冬の間、成長をお休みしている落葉樹たち。その枝先にある小さな「冬芽」(ふゆめ・とうが)は、命の不思議が詰まったタイムカプセル。中には、春の日差しと共にほころんでいく花や葉が準備されているのです。
冬芽といえばオニグルミ
ふかふかの毛皮で冬芽を大切に守っています。冬芽を語るときに欠かせない「葉痕」(ようこん:秋に葉が枯れて落ちた痕)は、羊に似ているといわれていますが、みなさんにはどんなふうに見えますか?
葉痕はどんな形?
カラスザンショウ・クズ・ニワトコ・ヤマウルシの葉痕です。どれも、へんちくりんなかわいい形。見る人によって、いろいろなイメージが溢れます。
●カラスザンショウ:普通のサンショウの木よりもはるかに大きくて太く高く育ちます。トゲも大きくて痛いです!観察するときは気をつけて!!あどけないお顔の上の帽子のようなところは「側芽」です。
●クズ:みなさんご存じの生命力豊かなツル植物。葉痕の上にある涙型のふたつのふくらみが冬芽です。
●ニワトコ:ぷっくりと大きな花芽の下には動物のような顔!奥に見えるのはほっそりとした葉芽です。
●ヤマウルシ:葉痕は大きなハート型、枝先の冬芽は褐色の毛が生えています。さわるな!危険!!樹液に触るとかぶれます。
クロモジ
高級楊枝の材料です。早春にきれいな黄色い花を咲かせます。冬芽はこんな不思議な形。真ん中のとんがった葉芽の横に2~4個の花芽をつけます。
リョウブ
円錐形の冬芽は「芽鱗」(がりん:冬芽を保護するうろこ状のもの)がはがれやすく、半分はがれると「陣笠をかぶった虚無僧(こむそう)」とか「ナポレオンハット」のようといわれています。でも、この姿でいる期間は短いのです。
コブシ
ふわっふわの毛皮のコート。こんなに大事に守られているから、真っ白いきれいな花が咲くのでしょう。横に寄り添っているのは葉芽。側芽の下の葉痕は何に見える?
トチノキとホオノキ
葉の様子が似ているのでよく比べられるトチノキとホオノキですが、それ以外はとても違っています。
●トチノキ:きらきらと輝くような冬芽。トチノキの冬芽はべとべとした水あめ状の樹脂で覆われています。栄養満点の冬芽を狙う小さな虫から身を守る手段です。
葉痕の形もさまざまで、こびとさん大集合!ですね。
●ホオノキ:枝のてっぺんにまっすぐに上を向いている冬芽は超大型で、日本の樹木では最大級です。春には、くるりんと外側のコートをぬぎすてて大きな葉を開きます。
ハクウンボク
こちらもふわふわ系。枯れた葉の中で育ち、葉が落ちるとお披露目される箱入り娘。「主芽」と「予備芽」(主芽が育たなかった時の予備の芽)がよりそって並んでいる姿はもふもふ心をくすぐります。予備の芽まで用意する、自然の不思議。
三大美芽(さんだいびが)
誰がよんだか、三大美芽!赤くてつやつやの美人さんたちです。
●コクサギ:お行儀よく並んだ芽鱗に白い縁取りがくっきり。
●ザイフリボク:芽鱗の間からふわふわの白い毛がチラ見です。
●ネジキ:赤い枝に赤い冬芽!葉痕もはっきり。
さあ!寒い寒いと言っていないで、冬の森のこびとさんたちに会いに行きましょう!フィールドで見る冬芽は、すぐにわかるものも多いのですが、小さくて見えにくいものもあります。ルーペは必須装備アイテム!
春に冬芽たちがほころんでいく様子は、命の輝きにあふれたドラマです。
(写真・解説の提供:宮城県森林インストラクター協会)