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《森の植物の歳時記》 [290]【ヤマモモ(山桃)】
疲労回復などの効果があると、近年注目されているのがヤマモモの実です。
雌雄異株で、4月頃に咲く花は花弁のない目立たないものですが、梅雨時分に赤く熟す果実は注目を集めます。山に生え、実が桃のように食べられることから名づけられたという説があります。
諸説ありますが、「古事記」で、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が「桃の子(み)」を投げつけて黄泉の国の雷神を退散させた“桃”はヤマモモの実だったという説もあります。
平安時代中期に作られた辞書として知られる「和名類聚わみょうるいじゅう」にもイチゴのような形で赤く、味は甘酸っぱく食用になると紹介されています。実が柔らかいために保存がきかず、運搬には不向きなため、山城・大和・河内・摂津・和泉という、五畿内各国からだけ貢納されていたという記録が残されています。
果実は多汁質の凸突起があり、この部分を食べます。中心部に種子が1個あります。
根粒菌と共生して、空気中の窒素を固定吸収するので肥料木と呼ばれ、瘦せ地での植栽も可能です。加えて、潮風害に強く、都市公害にも強いことから、街路樹に植えられることが多い木です。
ヤマモモ
ヤマモモ雌花
ヤマモモ雄花
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)