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《森の植物の歳時記》[283]【カンボク(肝木)】
ガクアジサイ(萼紫陽花)に似た花を咲かせますが、カンボクはスイカズラの仲間ですので全くの別種です。中央部に集まる両性花と、周りに装飾花があります。装飾花は虫を呼ぶ役割と考えられています。
比較的冷涼な環境を好む植物で、日当たりの良い山地の湿気の多い場所に自生しています。
古くから薬効のある木として認識されており、止血効果や打ち身、切り傷に民間薬として利用されていました。
人間にとって肝要な木という意味から転じて、「肝木(かんぼく)」となったという説があります。
江戸時代の歯ブラシ、房楊枝の材としても知られています。一般庶民が使うものはヤナギの仲間で作られる安価なものでしたが、高級品はカンボクで作った房楊枝でした。房の反対側は薄く削がれて先が尖っています。尖った先端は歯間ブラシ、薄く削がれた部分は舌苔を取るために使われていたようです。(ふさようじを総楊枝の漢字で表すこともあります)
果実は秋に赤く熟しますが、苦味があり、鳥も、他の赤い果実のように、一気に全てを食べるということはないようです。「鳥食まず」という名前までついていて、年明けまで残っていることもあります。
カンボク
房楊枝
テマリカンボク
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)