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《森の植物の歳時記》[280]【ヤセウツボ(痩せ靭)】
暖かくなってくると、道端の草むらなどにツクシを思わせるような頭の花穂が出現します。
花穂が伸びてくると、やや紫色を帯びた花がまばらにつく姿になります。}
シロツメクサなどのマメ科、タンポポなどのキク科、セリ科など様々な植物に全寄生する一年草で、葉緑素はありません。
地中海沿岸から北アフリカ周辺を原産地とし、1937(昭和12)年に千葉県で生育が確認され、以後、関東以西に分布を広げています。
0.3㍉程の微細な種子は風で飛散し、寄生主にたどり着くとその根に食い込んで養分を吸収し、完全な寄生生活をします。
シロツメクサなど、牧草として栽培されるマメ科の植物に寄生することもあり、害草として扱われています。
花穂の姿をウツボ(矢を入れて背負う筒形の武具)に見立てた名で、海岸のカワラヨモギなどに寄生するハマウツボに比べて、痩せて見えるという意の名前です。
近年、ヤセウツボから抽出された物質がアルツハイマー病の原因物質となっているある種のたんぱく質の凝集を抑える作用があることが確認されたとの報告があり、研究の成果に期待が集まっています。
ヤセウツボ
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)