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《森の植物の歳時記》[229]【カンアオイ(寒葵)】
山野の樹林の下のような、やや薄暗く湿り気のある場所を好んで生えています。葉がフタバアオイ(双葉葵)に似ていますが、常緑であることから寒葵(かんあおい)です。同じ仲間は地域によって様々な種があります。
江戸時代、カンアオイの葉に出る様々な斑紋が人気を呼んで、園芸種として注目されました。斑紋を鑑賞するための手引書まで出たようです。現在でも、古典園芸植物として愛好されている方たちがいらっしゃいます。
秋から冬、葉の陰に隠れて、地面に張り付くように暗紫色の花を咲かせます。花弁のように見えるのは萼(がく)で、花弁は退化しています。
ハエの仲間が受粉に貢献していることが確認されているカンアオイの仲間もあるのですが、多くはまだ謎のようです。
種子にはエライオソームと呼ばれるアリが好む物質が付着していて、種子散布はアリが貢献しているようですが、2×3㎜と比較的大きい種子を運ぶのには、アリの仲間でも大型のものが貢献しているとの報告があります。親株の傍に落ちるだけの種子もあるようで、分布が広がりにくい原因の一つのようです。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)
カンアオイ
フタバアオイ