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《森の植物の歳時記》 [214]【イヌビワ(犬枇杷)】

イヌビワは雑木林の中で普通に見られますが、気づく方は少ないかもしれません。果実の形がビワ(枇杷)に似ていることからの名と言われています。

雌雄異株で、各々に雌花、雄花をつけます。雄花はイヌビワコバチという昆虫が産卵するため、食用にはなりません。雌花は濃紫色に熟して美味しい果実になります。

蕾も花も同じ形のままで、花は咲いていないように見えますが、丸い蕾のように見える中に、小さな花が詰まっています。同じ仲間のイチジクをイメージすると分かりやすいでしょうか。イチジクを“無花果”と表記する所以です。

イチジクが日本に伝来したのは江戸時代です。日本在来のイヌビワがイチジクに似ていても、イヌイチジクという名前にはなれませんでした。

縄文時代の遺跡から、イヌビワのヘギ材で作られた篭が出土しています。

平安時代には、河内国と大宰府からイヌビワを貢納するよう定められていた記録が残っています。美味しい果実は貴重なものだったのでしょう。

現在では、もっぱら動物が好んで食べて種子散布をしています。

廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)

イヌビワ



















イチジク


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