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《森の植物の歳時記》 [158] 【シキミ(樒)】
仏前や墓前に供える仏花として知られるシキミですが、葉だけを目にすることが多く、花が咲くという認識はないかもしれません。
ハナノキ(花の木)、ハナシバ(花柴)とも呼ばれ、春に黄白色の花を咲かせます。枝葉には香りがあり、乾燥させて搗(つ)いて抹香として仏前に供えられます。その香りから「臭き実」がシキミになったとか、果実が有毒であることから「悪しき実」からシキミになったとか、語源は諸説あるようです。
古代の祭祀として常緑の木が“さかき”として使われていました。今でいう「サカキ」も「シキミ」も、共に“さかき”だったのでした。神事が「サカキ(榊)」、仏事が「シキミ(樒)」と分けられるようになったのは平安時代後期くらいからという説が有力です。
枝葉の強い香りは、死臭を和らげるとか、悪霊や野生動物が嫌ってお墓を荒らすことから守るとして、墓地に多く植えられてきました。
秋に熟す八角形の果実は、有毒ですので注意が必要です。野外調理の時に誤って使って大きな事故になったという報告もありますので、気をつけましょう。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)