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《森の植物の歳時記》 [97] 【ヘクソカズラ(屁糞葛)】
菎莢(ぞうきょう)に延(は)ひおほとれる屎葛(くそかづら) 絶ゆることなく宮仕へせむ
万葉集 巻16-3855 高宮王(たかみやの おほきみ)の歌です。万葉集でヘクソカズラが詠まれた唯一の歌です。ちぎった時の臭いは、万葉の時代にも糞葛と呼ばれていたようです。
菎莢は「かわらふじ」ともよまれ、マメ科の「ジャケツイバラ」か「サイカチ」が当てられています。ジャケツイバラやサイカチのように鋭い刺のある木にもしぶとく絡みながら延びる糞葛のように、頑張って宮仕えをするようにという思いを込めた歌と解説されます。
別名サオトメカズラ(早乙女葛)とか、花の形をお灸のもぐさの形に見立てて、ヤイトバナ(灸花)と呼ばれる地方もありますが、やはりあの強烈な臭い故でしょうか、一般に定着しません。花を水に伏せるように並べると、水の上で踊るように動きます。オドリコソウと呼ぶ地方もあります。果実まで強烈に臭うのが残念です。
この臭いは虫よけのためだと説明されるのですが、ホシホウジャクやチャイロハバチなどの幼虫はヘクソカズラの葉を食草としています。
廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)
ジャケツイバラ
サイカチ
チャイロハバチの幼虫