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《森の植物の歳時記》㊾ 【コブシ(辛夷)】
【コブシ(辛夷)】
早春の雑木林で、林縁を彩るのがコブシです。名前の由来は握りこぶしなのですが、それがつぼみの姿という説と、果実の姿という説があるようです。まあ、思いは人それぞれということでしょうか。
つぼみは長い毛のある皮と薄い皮に覆われています。花の咲く姿は優雅で、厚い毛皮のコートと、薄いスプリングコート、両方を脱いで白い春のワンピースで登場するというような表現をされます。花の基部に若葉が一枚つくのもおしゃれですね。
早春の里山で、春の田仕事を始める頃に花を咲かせます。田打ち桜、種まき桜、田植え桜、芋植え桜など、地域で農作業の適時を知る目安にされていたことがうかがえるような名前で呼ばれます。コブシが沢山咲いた年は豊作など、収穫の豊凶を占う目安にもされました。日々の生活が農業に支えられていた時代、暮らしに密着した存在の花だったのでしょう。
廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)