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《森の植物の歳時記》 [98] 【オニバス(鬼蓮)】

水底の泥に根を張って育つ水生植物です。水に浮くように育つ葉は大きく、直径が1mを超えることもあります。葉面に鋭い刺があり、オニバスと呼ばれる所以です。(葉の上に人が乗っている光景が話題になる植物は熱帯植物の“オオオニバス 大鬼蓮”で、別種です。)
古墳から種子が出土することもあります。清少納言は枕草子で「恐ろし気なもの」と表現しています。
一年草であることに加えて、河川改修やため池などの埋め立てで、生育場所が減少し、絶滅危惧種に指定されたり、生育場所が天然記念物として保護されたりしています。復活のための活動が活発な地域もあります。
種子は春に発芽して、葉を広げます。花は虫を呼ぶ開放花と、自家受粉で種子を作る閉鎖花が見られます。開放花には虫が集まるのですが、結実することは少ないようです。閉鎖花は開かないまま種子を水中に放出します。
種子は赤い斑点のある仮種皮に包まれて水に浮きますが、しばらく漂った後、水底に沈みます。すぐに発芽するものもありますが、数十年後に発芽することもあるとの報告があります。

廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)