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《森の植物の歳時記》 [84] 【ヤマユリ(山百合)】

ヤマユリは日本に自生する10種を超すユリの仲間の中で、最も知られているユリの一つです。
草原から、明るい林、雑木林の林縁部の斜面など、様々な場所で生育していますが、近年、放置された雑木林や草原が多く、自生の数を減らしているようです。また、大振りな花であることや、鱗茎(球根)が食用になることなどから、盗掘されることも多いようです。
20㌢を越すような大振り花は、アゲハチョウの仲間などが集まります。雄しべの先端、葯という花粉を出す袋の部分が揺れやすくなっているのも、虫に花粉を運んでもらう巧妙な仕組みです。
種子は発芽までに1年半、それから1輪の花を着けるまでに2~4年。時間のかかる成長過程です。近年、都市近郊の里山でヤマユリを復活させる活動も盛んになってきています。環境を整えて、気長に見守りたいですね。
時々、数十個の花を着けたという報告があります。帯化(たいか)と呼ばれる現象です。茎の成長する先端部分が帯状に広がって形成され、いくつもの茎が一面に癒着するために起こるもので、一種の奇形と言えるでしょう。

廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)