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ニッセイ緑のオンライン環境講座⑤~モクセイ~(講師:林 将之氏/樹木図鑑作家)

《テーマ》学校の樹木トップ20紹介⑤『モクセイ』



コオロギの鳴き声が耳につく秋の運動会の季節に、校庭や登下校の道で、どこからともなく漂ってくる甘い香りを記憶している人も多いでしょう。キンモクセイの花です。



その香りの強さから、早春のジンチョウゲ、初夏のクチナシとともに、初秋のキンモクセイが「三大芳香花木」に数えられることもあります。秋に咲く数少ない花木であることに加え、子どもの臭覚を刺激し、脳裏に残る香りこそが、学校に多く植えられる理由かもしれません。ニッセイ緑の財団が学校に寄贈する樹木名プレートの設置数ランキングで、キンモクセイを含む「モクセイ類」が第5位にランクインしました。



「モクセイ」と呼ばれる木には、キンモクセイ(金木犀)、ギンモクセイ(銀木犀)、ウスギモクセイ(薄黄木犀)の主に3品種があります。名が示すように、それぞれオレンジ、白、薄黄色の花が咲くこと以外は、そっくりです。日本では、花が鮮やかで香りが特に強く、名前もよいキンモクセイが昔から人気で、校庭や公園、庭、生垣などに多く植えられてきました。今回のランキングの内訳でも、大半をキンモクセイが占め、ギンモクセイとヒイラギモクセイ(柊木犀)がそれに続きました。



ヒイラギモクセイとは、ギンモクセイとヒイラギの雑種で、葉のふちにヒイラギのようなトゲがあり、これも「モクセイ」と呼ばれることがあります。理科の実験で、木の葉を水酸化ナトリウム水溶液でとかし、葉脈標本を作ることがありますが、これによく使われるのがヒイラギモクセイです。葉が厚くて硬いので、葉脈が残りやすいようです。



キンモクセイの葉も厚くて硬いのは同じですが、トゲはありません。けれども、枝を切って剪定(せんてい)すると、小さなトゲのようなギザギザのある葉が増えます。このようなトゲやギザギザは、葉を食べる草食動物から身を守る役割があり、人間に枝を切られた場合も「これ以上切るな!」と、トゲを増やして防御していると考えられます。みなさんの身近にあるキンモクセイの葉も見てみましょう。枝をよく切られている木ほど、ギザギザが多いはずです。



同様の現象は、ランキング14位に入ったモチノキとクロガネモチ(いずれもモチノキ科)でも見られます。両種とも秋〜冬に赤い実をつける木で、葉にギザギザはありませんが、枝を強く切った場所からは、小さく鋭いギザギザのある葉が現れます。なお、モチノキやクロガネモチの葉は、枝に1枚ずつ交互につく(互生)のに対し、モクセイ類の葉は2枚ずつ対につく(対生)ことが違いです。



では、キンモクセイは何色の実をつけるのでしょう? 実(じつ)は、日本のキンモクセイには雄株しかないといわれ、実がつかないのです。ギンモクセイやウスギモクセイには、初夏に黒紫色の実をつける雌株があるのに、不思議ですね。キンモクセイは、花つきがよいウスギモクセイの雄株から作られた品種では? とも考えられています。ときどき、キンモクセイが実をつけたという話題がニュースになります。それは、ウスギモクセイの間違いの場合もあれば、本当にキンモクセイが実をつけることもまれにあるそうです。幻のキンモクセイの実を、ぜひ探してみてください。

(林将之/樹木図鑑作家)



★当シリーズのこれまでの講座について

《前回(第4回)講座》https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3324288497604163

※前々回以前の講座は上記URLよりご確認いただけます。



★講師について

当講座の講師の林将之氏は、当財団が2019年度より全国の小・中学校等に提供している「学校の木のしおり」の作成に携わっていただいております。



★「学校の木のしおり」の提供について

ニッセイ緑の財団では、現在学校の木のしおりの活動実施校を募集中です!

ご興味のある方は以下URLより募集ビラ・募集要項をご確認の上当財団宛にお申込みください(お申込みはメール・FAXどちらでも可能です)。

(HP記事)

http://www.nissay-midori.jp/topics/details/776

(FB記事)

https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3263263873706626

※当講座については『毎週木曜日』に登載予定です!



1:キンモクセイの花は9月下旬〜10月中旬に咲く。丈夫な常緑樹だが、大気汚染がひどい場所では開花が少ない。





2:キンモクセイの葉は、やや反り返ってゴワゴワした印象。中国原産といわれてきたが、日本原産説もある。





3:校庭に植えられたキンモクセイの古木。高さ2〜4m前後で、丸く刈り込まれることが多い。





4:キンモクセイの樹皮。ひし形の模様がある。樹皮がサイ(犀)の肌に似ていることが木犀(モクセイ)の名の由来。





5:ギンモクセイは中国原産で、花は白〜クリーム色。





6:ウスギモクセイの花は薄黄色で、濃淡は個体差がある。秋以外に春などにもしばしば開花し、「四季咲きモクセイ」の名で植えられることも増えている。野生のウスギモクセイは中国のほかに九州南部にもある。





7:左からキンモクセイ、ウスギモクセイ、ギンモクセイの葉。前二者はほぼ同じ。ギンモクセイはやや幅広く、ギザギザ(鋸歯)のある葉が多い。





8:ヒイラギモクセイの葉は、ヒイラギより少し小さなトゲがある。大きな木ではトゲが減ってくる。





9:ヒイラギ(モクセイ科)の実は黒紫色で夏に熟す。キンモクセイの実もこれとよく似ている。





10:モチノキ(黐の木)は赤い実をつけ、葉はスベスベ。





 


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