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《学びの森の生態図鑑No.27》
■ツル植物■
自分では立てない・・・腕を伸ばして絡みついて、他の植物や物を支えに、太陽の光を求めてより高い所を目指すちゃっかり者。ただし、絡みついた相手を覆いつくして枯死させてしまうリスクもあります。自立するためのエネルギーを、たくさんの葉とより高く伸びていく茎へと振り分けて貪欲に光合成をする捨て身ともいえる進化をした植物たち、その生命力にあふれる姿はさまざまな表情をみせてくれます。
イワガラミ
県民の森イチオシのイワガラミは、毎年、見事な花を見せてくれます。初めて見たときは、ツル植物とは思えませんでした。絡みつかれた木はもう枯れていて、いつ倒れるのかな?と心配になります。
名前の通り、岩にも絡みつきそうな勢いです。
滝のようなフジ
フジの花の時期には、森のあちらこちらに紫色の滝が出現します。人の手で藤棚にきれいにまとめられたフジとは違って、野性味を帯びた迫力のある眺めです。
フジ
見事な花穂です。花が終わると、大きな豆のさやがぶら下がり、乾くと『ぱちん!』という派手な音とともに種がはじけ飛びます。ツルの先端は巻きつくところを探して、ぷらぷらと揺れています。
クズ
フジと同じくマメ科で紫色の花、でも、花は上向きです。
古くは、食用(葛粉)、薬用(葛根)、飼料、繊維の材料、ツルでかご編みなどさまざまな用途に使われました。絵画や意匠の題材としても扱われ、多くの家紋があります。秋の七草にも数えられ、俳句では秋の季語になっています。
現在では利用も少なくなりました。そして、クズは物凄い勢いで、林や谷間、空き地も覆いつくす『マント群落』を作り上げます。
マタタビ
今の時期、葉を白く染めるマタタビ。白い色でムシたちに「花が咲いたよ~!」と合図を送っています。葉の裏側の方に、小さな花びらが5枚の白い花は夏梅ともよばれ、とても清楚でかわいらしく、良い香りがします。
果実はマタタビ酒の材料となり、疲労回復、滋養強壮に効くとされます。マタタビミタマバエのムシコブで作った方が効果抜群のようです。
ヘクソカズラ
「へ、くそ」のような臭いがするそうですが、そんなに臭うのかなあ?といつも思います。実が一番臭うようです。乾燥させたものは、ほとんど臭わないのでクラフトの飾りなどに使えます。
臭いとは裏腹に花はかわいらしく、別名「ヤイトバナ(灸花:花を伏せておいた形がお灸に似ている)」「サオトメカズラ(花を水に浮かべた姿が田植えをする娘(早乙女)に似ている」などがあります。
スズメウリとキカラスウリ
植物には動物の名前がついたものが多くあります。特に小さいものにスズメ、大きいものはカラスとつくものはいくつかありますね!
スズメウリ、小さな白い花の後には、これまた、熟すと真っ白になるまあるい実。直径は1~2㎝。
キカラスウリ、花はレースのように繊細な作りで、日没後に開花し、翌日の午前中くらいまでしか咲いていません。スズメガが受粉の役目を担っています。実は5~10㎝と大きく目立ちます。
どちらも、熟した実は甘いですよ!
ミツバアケビ
秋の味覚のアケビの仲間。葉っぱが3枚なのでミツバアケビと呼ばれます。花は春、今は小さな実が生っている頃です。秋に赤紫になった実は、果皮が割れて、中からゼリー状の果肉が見えます。果肉は半透明で中に黒い種がたくさんあり、甘くておいしいです。皮は天ぷらにしたり、肉詰めにしたりしてほろ苦さを楽しみます。ツルは弾力があり、丈夫でしなやか。かごなどの民芸品になります。
暑い夏、ツル植物たちは、ここぞとばかりに繁茂しています。あらゆるものに絡みつくため、駆除がしにくく、刈払い作業の敵となっています。その一方で、エネルギッシュな生命力には驚かされるばかりです。
(写真・解説の提供:宮城県森林インストラクター協会)