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《森の植物の歳時記》[51] 【キブシ(木五倍子)】
【キブシ(木五倍子)】
早春の雑木林の林縁で、簾のように花穂が垂れ下がります。思わず足を止めてしまう方も多いのではないでしょうか。垂れ下がる花穂の姿を藤に見立てての名前という説もあります。キブシ、漢字では木五倍子と書きます。
ヌルデというウルシ科の木があります。この木にアブラムシの仲間が作る虫こぶ(ヌルデミミフシ(白膠木耳五倍子) 中でアブラムシが集団生活しています)を粉にした五倍子粉(ふしこ)はタンニンを多く含んでいます。明治以前まで、何百年も引き継がれていた歯を黒く染める、お歯黒という風習がありました。
この歯を黒くする五倍子粉(ふしこ)は高価なもので、庶民が使うのはその代用品で、同じくタンニンを多く含むキブシの果実を粉にしたものでした。キブシ(木五倍子)の名前の由来です。
雌雄別株で、雄株のほうが花が多く、花穂も長いようです。花の中心に雌しべが見える雌株は雄株の花穂に比べて、丈が短く、花の数が少ないようです。夏には果実が実ります。葉の形、大きさ、果実の大きさなどに変異が多く見られます。
廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)
ヌルデミミフシ
ヌルデミミフシ