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《森の植物の歳時記》 [127]   【ハゼノキ(黄櫨)】

ハゼノキの紅葉は鮮やかな色合いで、思わず足を留めてしまうような美しさです。櫨紅葉と呼ばれることもあります。
雌雄異株で、紅葉が終わったころにハゼノキの木を見ると、多くの実がぶら下がっていることがあります。この実から採れる蝋が和ろうそくの材料になります。
安土桃山時代末に、筑前(福岡県北西部)の貿易商人らによって中国南部から輸入され、栽培されたと伝わっています。また、江戸時代中期にも琉球を経由して輸入され、薩摩一帯での栽培が広まり、温暖な地域での栽培が広まりました。
ちょっと歪な形の実は、種子の周りに多くの油分(蝋)を含んでいます。粉砕して、熱を加えて圧力で絞り、抽出した蝋を和蝋燭にします。
蝋物質(油分)の多い木の実ですから、色は灰色で目立たなくても、多くの野鳥が好んで食べて、種子散布に貢献します。実生があちこちで見られる所以です。
紅葉の美しさから庭木として植えられることもありますが、ハゼノキはウルシ科の植物ですから、たまにかぶれる方もあります。特に春先の芽吹きの時期には気を付けましょう。

廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)