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《森の植物の歳時記》 [110]  【コシオガマ(小塩釜)】

秋、日当たりの良い草地に生える半寄生の一年草です。
「汐汲」(しおくみ)という歌舞伎があります。その台詞「浜で美しいのは塩竈」を「葉まで美しい」とかけて命名されたといわれるシオガマギク(塩竈菊)の小型なタイプという由来のようです。
霜の降りる頃の草紅葉は、葉面の毛に露を溜めて、まさに“葉まで美しく”見えます。
多くの寄生植物は寄主が限定されているのですが、コシオガマは限定されていないようで、様々な植物に寄生している姿を見ることができます。
自らも葉緑素を持っており、自力で生きていくこともできるという報告もあります。
0.6×1.0㎜という微細な種子で、近くに他の植物があれば、根に侵入して育ち、栄養をもらって育ちます。不幸にして近くに植物の根がなくても、自力で生きて子孫を残すことはできるということなのでしょう。寄生植物の進化の途中段階にあるものと説明されることもあります。
一年草ですので、種子散布前に草刈りされたりすると、子孫を残すことはできません。
大きく口を開けたような花にはアブの仲間など、多くの虫が訪れて受粉に貢献します。

廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)