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《森の植物の歳時記》 [94] 【スイフヨウ(酔芙蓉)】

富山県八尾町で行われる風の盆、二百十日に当たる9月1日から3日に行われ、風の神を鎮め、豊年を祈る祭りです。越中おわら節に合わせて、夜を徹して踊られます。三味線、胡弓、太鼓の伴奏が物悲しく流れて、儚げな風情に多くの観光客が訪れることで知られています。
この祭りに色を添えるのがスイフヨウです。フヨウの変種で、一般のフヨウの盛りが過ぎたころから咲き始めます。フヨウ同様、一日花ですが、朝、白色に咲いて、時間の経過と共に、昼頃にはほろ酔い加減になり、夕方には淡紅色から紅色に変わります。この色の変化を酒の酔いに喩えた名前です。一日花ですが、花殻は一日では落ちませんので、遠くから見ると、紅白の花が咲いているように見えます。気温が低いと二日越しで酔うこともあります。一般には八重ですが、たまに結実する種子から育てると、一重咲きと八重咲のものが出現します。
直木賞作家、高橋治さんの『風の盆恋歌』で悲恋の象徴のように表現されている花です。石川さゆりさんの『風の盆恋歌』というほうが分かりやすいでしょうか。

廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)