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《森の植物の歳時記》 [92] 【ナツズイセン(夏水仙)】

民家近くの空き地などで大振りなピンクの花を咲かせます。花の大きさに加えて、花時に葉がないこともあり、注目を集めるヒガンバナの仲間です。園芸種という扱いをされることも多く、リコリスという名前で売られていることもあります。
山野に自生するとの説もありますが、多くが人家の近くで見られることから、古い時代に中国から渡来して、野生化したという考え方が主流になっています。近年の研究で、日本では自生していない中国原産の植物2種の自然交配によって誕生した種が、渡来したという説が有力になっています。
ヒガンバナ同様に、花が咲く時には葉がありません。早春に幅2㌢前後で、ちょっと粉っぽい緑色の葉を出します。この葉は初夏には枯れて、盛夏に花茎を伸ばし開花します。一般には結実はしませんので、繁殖は鱗茎(球根)で行います。
全草有毒植物ですので、ニラなどと間違えないように注意が必要です。
古い時代の渡来種ということから、登載されている図鑑が在来種の図鑑であったり、帰化植物の図鑑であったりと様々なパターンが見られます。

廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)