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《森の植物の歳時記》 [87] 【クサアジサイ(草紫陽花)】

アジサイの仲間で、草本という意味の名前です。草丈は50㌢くらいにしかならないのですが、水が染み出るような場所や、湿り気の多い林内やその林縁で儚げな花を咲かせて注目を集めます。
木本のガクアジサイが装飾花で虫を呼ぶのと同様に、中央部に集まる両性花の周りを萼片3枚の装飾花数個が囲み、虫を誘います。両性花はつぼみの時は下を向いていますが、開花と共に上を向き訪花する虫に花粉を託します。1個の雌しべを囲むように多数の雄しべがあります。この雄しべの姿がふわふわとした感じに見えて、「かわいい!」と若い方たちの注目を集めたりもします。確かに、湿り気の多い崖などで咲く花の淡いピンクの雄しべはちょっと触ってみたい誘惑に駆られることがあります。儚げな花ですが、ちょっと強面?の甲虫類も訪花するようです。
種子は0.3×1㎜と微細ですが、翼があり、風に乗って運ばれて分布域を広げます。加えて、多年草ですから、冬に地上部は枯れますが、また春に芽吹きます。

廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)